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「……お前ら。何で、このままじゃ…いけないのだ？｣ 玉鼎 太乙 がいやがるじゃないか！！｣ 燃燈の問いに、二人は同時に叫んだ。 「……バカか！お前らは……」 「だってーーー」 「しかしだな、燃燈……｣ さらに眉を吊り上げた燃燈に、二人は慌てて、言い訳をしようとする。 「あのな。何でお互い好き合っているのがわかったと言うのに……そう、別れようとするんだ……？！｣ その質問に、太乙が、うなだれて口を開いた。 「でも、何時かこの薬の効用が……切れたら……」 太乙は、もっともな不安を口にした。 それを聞くと、燃燈は穏やかな笑顔を浮かべた。 「薬の効果など……とうに切れてるぞ」 「…えっ？」 聞き返す二人に、玉鼎は先程雲中子から聞いた、薬の効果の話をした。 「だから……お前らは、安心して……相手の事を想っていいんだぞ｣ 「燃燈……」 太乙が、嬉しそうに、燃燈の肩にコツンと額をつける。 「ありがとう……｣ ぽんぽんと、燃燈は太乙の頭を優しく叩いた。 「燃燈。私からも……礼を言う｣ その様子を穏やかに見ながら、玉鼎は口を開く。本当に、こんな気持ちになったのは、初めてだった。恋など、駆け引きをして、惚れさせた方が勝ちだと思っていたのに。 「言っておくが……」 燃燈は、少しばかり玉鼎を睨み付けるようにして、釘を刺す。 「太乙は、異母姉様のお気に入りなのだからな。泣かしたら……｣ 「わかっている。大切にする」 玉鼎は、まだ燃燈に抱かれている太乙を、奪うようにして自分の方を向けさせた。 「太乙……」 眼で、燃燈にこの場から去るように、威圧する。 「これで、なんの障害もなくなった。心置きなく……｣ それでも、あの気障さは抜けなかったらしく、太乙の肩に手を回し、愛を語ろうとする。 「あの……さあ、玉鼎。聞きたい事が、あるんだけどぉ……｣ そんな玉鼎の様子を見て、太乙がちょっと意地悪そうに、言い出した。 「……なんだ？」 「この間まで、付き合っていた彼女は……どうするの？」 「か、彼女？」 「そっ。君が、崑崙山で逢引していた……彼女｣ 「逢引……？」 初めて聞く事に、燃燈が反応する。 「あ……あれは……」 玉鼎はしまったと思った。太乙はすっかり忘れていたと思っていたのに……。 「私は、二股は、いやだからねー｣ 太乙に責めるように見られて、玉鼎はあわてて弁明をする。 「確かに私は、何人もの女性と付き合っては来たが、今までに一度たりとも、同時に複数と付き合うような事は、してない｣ 威張って言うほどの事かはともかく、それは本当らしい。 「だから……あの原始天尊様の侍女と、別れたの？そうか。彼女が逢引の相手だったんだね……」 「……そ、そうだ…」 今更嘘をついても仕方がないので、玉鼎は短く肯定する。 「でも、あの別れ方は……ひどいんじゃない？いきなり別れたら、怒るよねー｣ 「わ、私にどうしろと？」 「彼女には、きちんと訳を話して、納得してもらって……中途半端なのは、私、嫌いだからねー｣ 「わ、わかった。きちんとすれば、私の事を、受け入れてくれるんだな？｣ 言うと同時に、玉鼎は太乙を置いて駆け出す。行く先は、勿論玉虚宮だった。 「玉鼎って、結局は……やりたいだけなのかなぁ」 その後姿を見ながら、太乙は誰ともなしにつぶやく。 「……ははは」 その隣で、燃燈が乾いた笑いをした。 頬を手のひら型に赤く染めた玉鼎が、太乙の所を訪れた。 「……どうしたの？その……」 びっくりして、そんな言葉を言い出してしまったが、太乙は玉鼎の誠実さがよくわかった。そのまま、言葉を切り、優しく微笑む。 「いや。ともかく……約束は果たしたぞ｣ 「……うん」 本当は、その頬に口付けようかと思ったが、痛そうなので止めた。その代わりのように、太乙は玉鼎にしがみつく。 「太乙」 玉鼎の心臓が、どきりとし、痛くなった。 「太乙……太乙」 何度も彼の名を呼び、きつく抱いて痛くしないように、玉鼎は太乙を抱きしめた。 「あ……ん」 甘い声に誘われるように、玉鼎は太乙に唇をかさねる。 「…ああ、……うん」 恥ずかしがりながらも、太乙は玉鼎の口付けをうけた。なんだかんだ言っても、玉鼎のキスはとても上手く、太乙はすぐにうっとりとした表情を浮かべた。 「あ、あの……｣ 「今日は……暇なのだろう？」 顔を赤らめている太乙に、玉鼎はそう囁く。 「……玉鼎って……ほんとーに、スケベなんだね」 「これ以上待たされたら、どうにかなってしまいそうだ」 くどく言葉は相変わらずだったが、太乙はひっそりと笑って、玉鼎を部屋に招き入れた。 「優しく……してよね」 先日の事があるので、一応釘を刺してみる。 「勿論だ。お前を、天国につれて行ってやる｣ 「……調子に乗りすぎ…っ」 呆れつつも、太乙は目一杯の、幸福感に包まれていた。 「どうした？随分と、大人しいな｣ 意気消沈したまま、ぼーっと空を眺めている雲中子に、燃燈は声をかける。 「太乙は……玉鼎と、上手くやってるのかと…思ってね」 「そうだな。本当は……お前も太乙が……好きだったのだものな」 燃燈に言われて、雲中子は驚いて、彼を凝視した。 「だから……あんな、罠を仕掛けたんだろう？」 「……さてね」 “なんだ、ばれてたのか”と、雲中子は残念そうに、口の中でつぶやく。 「仕方ないじゃないか。太乙が……好きだと言うのだから｣ 雲中子は、もう一度視線を、崑崙山の空に戻した。 「太乙が、玉鼎を……気になると言うんだから」 雲中子の言葉を聞きながら、燃燈は微笑んだ。 言った、と言っても、それ程はっきりと、太乙が玉鼎を好きだと言った訳ではない。二人で、お茶を飲んでいた時、太乙が何となく、玉鼎はカッコイイなどと言ったのだ。 太乙にしてみれば、さして仲がいい訳でもない玉鼎を、玉虚宮でちょっとみかけた感想を、述べただけだったのだが。 「お前も因果だな。黙って、太乙を自分のものにしてしまえばよかったのに｣ 「いやねー。つい、研究者の性の方が、勝っちゃってねぇ｣ “それに……”と、雲中子は続けた。 「玉鼎に惚れ薬を飲ませるって言うのは、前々から考えていたんだよ」 「……？｣ 「奴が、何人の仙女に手を出したと思っているんだい。その中の一人や二人が、私の所に来ても、おかしくはないだろう？｣ 「……もっともだ」 燃燈は笑った。挙句に太乙とくっついたとあっては、彼女達もいたたまれないだろう。 「本当は、惚れ薬なんて方便で、奴は心から、太乙を好きになってしまったって事なんだけどさ｣ 「だから……人の心は、わからないだろう？それを、思い通りにしようなんて事……少し考え直した方がいい｣ 「そーするよ」 これに懲りて、その後雲中子が、人体改造の方に情熱を燃やすようになってしまったのは、言うまでもない。 一応は、玉鼎を自室に招き入れ、お茶を振舞いながら、太乙は聞いて見た。 「お前が、望むなら」 「……言ってないよー」 赤くなりながら席に着く太乙の手を、玉鼎が取る。 「おいで……」 ドサリと、太乙は玉鼎の上に倒れ込まされた。 「……ちょっ……」 「昼間だろうが、関係ない。ここには、私達しか……いないのだから｣ 「……あ、で、でも……｣ 太乙が抗議をする間もなく、玉鼎の唇が太乙のそれを掠め、露になった首筋に降りる。 「この間は……ひどい事をしてしまったからな。今度は……お前から…動いてみろ｣ 「え……ちょ、そ、そんな……」 抗議の合間にも、太乙の下半身が脱がされ、すばやい動きで、玉鼎は懐から、あの香油を取り出し、自分の指につける。その指を、スルリと太乙の秘部に差し込んだ。 「あ……ああっ」 先日と同じ、熱く柔らかい感触が、玉鼎の指を飲み込む。勿論一度では足りないので、玉鼎は何度も指を濡らし、太乙の中をかきまわす。その間に、太乙の足を自分の腰の方に回させ、身体を更に固定させる。 「あ……い、いや……｣ 「その割には……随分と締め付けているようだが……」 「い、いや…だって…」 潤いに任せて、玉鼎の指が太乙の中の壁を、回しながら刺激していく。そうでなくとも、先日玉鼎に与えられた快楽を思い出し、太乙の息があがった。 「あ……そ、そんな……だめ…あぁ……！」 いくら二人しかいないと言えど、自分の部屋で、こんな声を出していて、恥ずかしくない訳はない。 太乙の戸惑いをよそに、玉鼎は己のモノも濡らし、準備をする。そして、太乙から指を引きぬき、己のモノをあてがった。 「あ……ああ……！」 「太乙。怖がらないで……力を…抜いて……｣ 「ふ……あっ…」 玉鼎は太乙の足を広げさせ、太乙の腰を掴み、ゆっくりと降ろしていく。 「太乙。どうだ？｣ 先日、一回入れたからか、抵抗を示しながらも、太乙の内部は玉鼎のモノを飲み込んでいった。そして、彼のモノを締め付ける。 「いいようなら……動いてみろ」 「……ああっ、ぎょ…玉……て…ぇ」 言いながらも、太乙の腰がゆるゆると動き始める。 「……いいぞ。そのまま、回してごらん｣ 「……あ、……あふ……」 太乙は玉鼎にしがみつきながら、その腰を、自分の感じるままに動かし、その様子に、玉鼎はほくそえむ。 もう一度、玉鼎は唇を首筋から、更にあらわにさせた鎖骨の周りにすべらせ、左手で、背中を撫で上げた。もう一つの空いた手で、太乙自身を愛撫する。 「あ……っ！ああ……」 艶っぽい声と共に、太乙は我を忘れていった。 面白くなさそうに、公主は弟に聞く。 「いいではないですか。太乙が幸せなら……｣ 昨日から、こんな風にあいまいに笑ってばかりだと、燃燈は思ったが、それしかリアクションのしようがない。 「それはそうだが。もう少し、面白い事になるかと、思っておったのに……｣ 「異母姉様……｣ 何だかみんな、困ったものだと思いながら、燃燈はお茶を口に運んだ。 ＥＮＤ
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