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【３】 ＊ いつもよりはゆっくり起きた二人は、玉鼎の洞府のテラスで、ブランチを取っていた。 「……」 いつもなら饒舌な太乙が、無言で箸を運んでいた。 今日の献立は、玉鼎特製の野菜粥に野菜餃子。デザートはタピオカ入りプリンで、お茶はジャスミンティーだった。 「どうだ？今日の出来は、まあまあだと思うのだが……｣ 「う、うん。とっても、美味しいよ！」 慌てた様に、太乙が返事をする。 「そうか。よかった。太乙、気分は……どうだ？｣ 「え……え…ーっと……」 そう聞かれると、太乙は返事に窮してしまった。 玉鼎が聞きたい事は、わかる。昨日の情事の後、すっかり疲れて眠ってしまった自分だ。まあ、それを見れば、太乙がすごく満足した事も、わかると言うモノだが。 「お前が…いやではないと言うのなら、それで良い」 「……えー……っと、その……」 太乙は、肯定してしまうのも、なんかイヤだとは思ったが、実際、すごく気持ちよかったので、あえて嘘を言う程でもない。だから、どうしたものかと、言葉に詰まってしまった。 確かに、玉鼎の言う通り、あんな風に抱かれて、感じた。かと言って、毎回“あれ”というのは、考えものだ。 「まあいい。そのうち慣れるさ」 「……慣れ……？」 どうも昨日から、玉鼎の発言には、とまどうばかりの太乙だった。 「今日は……ここでゆっくり……出来るのだろう？」 食後の薔薇茶を飲みながら、玉鼎が念押しの様に言う。 「……う、うん｣ やはり、歯切れが悪く、返事をする太乙だった。 それでも、午後になると、元気が出てきたのか、太乙は饒舌になった。ひとしきりはしゃいだ後、午後の日差しを受けながら、二人は居間で、くつろいでいた。 太乙は、ソファに座って、玉鼎の所にある書物などを、楽しそうに見ている。 「……太乙」 その姿を、向かいにある安楽椅子で、やはり巻き物等を見ていた玉鼎が、少しばかり深刻そうな声色で、恋人の名を呼んだ。 「んー……なあに？」 「やはり……きちんと……聞いておいた方が…いいかと思ってな」 「……何を？」 読んでいた本を離さず、それでもさすがに、玉鼎の方を向く。 「明るい所でやるのは……やはりいやか？」 いきなりな質問に、太乙は持っていた本を、取り落としそうになった。 「……昼間っから、何て事聞くんだようー。そりゃあ……前よりは……｣ 「よくなったのだな？」 「だから！そ、そんな風に言わないでよ。なんか、私……すごく淫乱になったみたいじゃない……｣ 「そんな事はないと、言っているだろう。それに、私は嬉しいのだ。お前が、受け入れてくれて……｣ 玉鼎は立ちあがり、太乙の側まで歩いてくる。 「だから……もう少し…慣れる気はないか？」 「……っ？慣れるって……」 戸惑う太乙に、玉鼎は優しく口付けをする。 「昨日は…一回で終わりだったから……不満じゃないかと思ってな｣ 「……っ！そんな事、あるわけ……ん……｣ 虚を突かれた太乙は、あっさりと唇を塞がれる。突然の感触に、驚いて開かれた口に、熱いものが差し込まれた。 「ん……ああ……｣ 何時も通りの服を着ていたにもかかわらず、あっさりと、玉鼎の手が襟元から差し入れられ、指が胸の辺りをさまよう。 逃れようとする太乙の腰を、空いた片方の手で押さえる。そのまま舌で、太乙の中を蹂躙し、息をあげさせた。 太乙は頭の芯が、くらくらしてくる。それでも、玉鼎は太乙の唇を離そうとはしなかった。 玉鼎の指は、初め優しく、円を描くように太乙の赤い実をくすぐる。そして、それがしっかりと硬くなったのを確認すると、指先で摘むように、刺激を加えた。 「……ん…く……｣ 初めのいやがっていた態度はどこへやら、太乙は玉鼎の加える愛撫に、すっかり応えていた。 「……はぁ…。玉……鼎…」 やっと開放された唇は、甘い息と共に、玉鼎の名を呼ぶ。 「カーテンは閉めておいてやるからな。外からは見えない……｣ 「そ、そうじゃなく……て｣ 「昨日の、ああ言う光の中も良いが、太陽の光の中で……お前を、見たいんだ」 「……で、でも」 「なんなら、昨日のように、目隠しでもしようか？」 「冗談を…！っん……！｣ いくつかの、太乙の文句を受け流しつつ、玉鼎はまた太乙にキスをする。そのままソファに、太乙の体を倒した。そして器用に、太乙の両手を、押さえてしまった。 「……ん……ああ……ぎょ……」 昨日の今日だ。太乙の体は、玉鼎の与える愛撫に、すぐに反応する。身体が、昨日両手を縛られ、身動きできないままされた感覚を、思い出していたからだ。 あんな風にされるのは、我を忘れるほどの快感を感じられるのだと、知ってしまったから。 「は……んん…っ……」 何時も以上に、太乙の口から、素直な喘ぎ声がこぼれる。こんな昼日中の、しかも居間だというのに。 太乙は、モラリストだ。いや、そうだと自分で、思いこんでいる節がある。玉鼎に、一生懸命に口説かれて、彼の要望に応えた後は、以前ほど、こういう行為が嫌いではなくなったが、やはりまだ心のどこかで、背徳的な行為だと、思っているようだった。 「太乙……」 それでも、こうやって玉鼎に抱きしめられ、優しく呼ばれるのは、大好きだった。 「あ……あの…玉鼎……」 「愛してるよ」 玉鼎の手が、太乙のズボンを脱がし始めた。太乙は一瞬抵抗したが、両手がすでに押さえられており、合間に玉鼎が、太乙の感じるところに、集中的に唇と舌を使って、刺激を加えるため、その抵抗も、長くは続かなかった。そして数分後には、太乙の下半身は、すっかり生まれたままの姿にされてしまった。 「……ぁ」 そうなってしまっては、太乙も今更“いや”を言えるわけもなく、それに、身体はすっかり熱く、太乙自身も、少し勃ちあがっていた。 「玉…鼎…」 そんな状態で口から出る言葉は、しっとりと艶を帯び、もうどうにでもして……と言う感じの、表情だ。 「綺麗だ。こんな風に、お前のそんな表情を、太陽の明かりの下で見られて、うれしいよ……」 玉鼎の言葉に、ますます身体が赤くなる太乙だった。 そして、赤くなった太乙は、玉鼎の更なる愛撫に、我を忘れそうになった。 玉鼎は、ソファに横たわっていた彼を、もう一度起こす。太乙は、すっかり玉鼎の愛撫に息を乱し、されるがままだった。力が入らないために、少し前屈みに座る格好になる。そんな太乙の後ろに手を回し、玉鼎はその両手を、昨日のリボンで後ろ手に縛ってしまった。 「……あっ」 それは、身体はこんなになっていながらも、未だ明るい中ですることを拒む太乙への、戒めだった。 赤くなる太乙の身体を、背もたれに預けさせ、簡単には逃げられぬようにすると、玉鼎は彼から一歩離れて、もう一度その姿を眺めた。 「お前は……本当に、黒が似合うな」 太乙は、いつもの仙人服を着ていたが、宝貝やプロテクターなどは着けていなかったため、その細い腰や薄い胸がはっきりとわかり、更に、大きく開いた襟元から、細い首や鎖骨が見えていた。その白い肌は、服の黒とよく合っていて、玉鼎を興奮させた。その上、ズボンを脱がしてしまったのだから、長い前身頃の間から、白く綺麗な足が、見え隠れし、玉鼎の感情を更に揺さぶった。 「こんなになっても……まだ、いやか？」 その、太乙の下半身に被っている布の上からも、彼が十分感じていることは、見て取れた。それを揶揄し、玉鼎は意地悪く言う。 「それは……」 「身体に……聞く…までも、ないかな……」 恥じ入る太乙のそれを、玉鼎は服の上から、なでる。 「は……い、いやぁ……」 甘く洩れる自分の声を、なんとか飲み込もうと、太乙は唇を噛む。 「正直では……ないな。では、素直になれるように…してあげよう」 「何を……」 少しおびえた表情を見せた太乙に、玉鼎は優しく口付けをする。それと同時に、服の中に手を入れ、中心を避ける様にしながら、脚を愛撫する。 「……玉鼎……」 初めは恥ずかしかった太乙も、昨日みたいにその部分がが露わにされていないので、玉鼎の与える感触を、少しずつ受け入れ始めた。そして、さっきより熱く繰り返される口付けにも、応え始める。差し入れられた舌が、自分のそれを絡め取り、歯列をなぞり、上顎を舐め……。 「ん……んふ……」 昨日と違い、自分の意志で閉じた目をうっすらと開ければ、目の前には、愛しい玉鼎の顔があった。 その目が、やはり薄く開けられ、視線が合うと、太乙は恥ずかしそうに視線をそらした。。 「明るい中でやるのも……いいものだろう？」 「……し、知らないよ……」 太乙は、顔を背け、目を閉じる。 玉鼎の手は、ゆっくりと太乙の脚を、開いていった。 一旦太乙のを離れた玉鼎の唇は、首筋を何度も行き来し、そのうち唇だけでなく、濡れた舌が一緒になぞり始める。柔らかく、太乙の声が大きくなった場所を、吸い上げ、赤い痕を付ける。 「あ……ああ、玉鼎ぇ……だ…だめぇ」 太乙は、今度はきつく瞳を閉じ、与えられる快楽に耐えようとしているが、洩れる声を抑えることができない。昨日と同じで、手を縛られているからだった。いつもなら、片手で口を押さえるか、枕に顔を付けて、声が出ないようにしていた。だが今は、その枕もなく、気を逸らすためにシーツを握りしめる手も、自由を奪われている。 「太乙。いい声だ。表情も…本当にすてきだ」 「いやぁ……見ないでぇ…」 「素直になれ。いいだろう？こんな風に…私に見られるのも……」 ふふっと、妖しく笑った玉鼎は、太乙の服を脱がせ始めた。 太乙の胸が露わにされ、そこには赤く色づいている乳首があった。玉鼎はそれを口に含み、舌先で転がし、甘噛みをする。太乙の口から、今まで以上の甘く、熱い吐息が漏れていた。 すでに、拒絶の言葉は、太乙の口からは聞かれなかった。 「…もう……いいな……」 玉鼎がその濡らした指を、太乙の内部に一本いれた。 「あ……や…あふ……」 玉鼎の指が、太乙の中をいつものようにかき回す。それは、慣れた感覚だったにもかかわらず、この状況の中、何時もよりずっと、太乙を乱れさせた。 「あ……あぁー…んっ」 すでに、太乙にはこの状況が恥ずかしいという意識はなく、本能のままに、嬌声をあげる。 玉鼎の指が二本に増やされ、太乙の一番感じるところを、その二本の指が擦りあげる。 「やぁっ！ぎょ……も、もう……おねが…い……」 「欲しい…のか？」 指を動かしながら、太乙の耳元に囁く。その玉鼎の息も荒い。 「お……ねがい……い、入れ…て……」 「やっと……素直になったな」 玉鼎は、太乙の艶っぽく、赤くなった表情を堪能しつつ、その指を抜いた。 「これで……もう……慣れただろう？」 太乙の返事はなく、ただ喘ぎ声だけが部屋に響く。 そして、玉鼎は、更なる快楽を追求するべく、太乙の脚を更に広げた。そこに、我慢しきれなくなった己の欲望を、挿入する。 「あ……ああっ！」 何時の以上の衝撃と、快楽が、太乙の中を突き抜け、目元が潤む。 うっすらと開けた瞳には、居間の天井が映っていた。 「あ……ああ、ぎょく…」 こうやって、明るい光の元に晒されると、太乙は自分がどれほど淫乱な獣に変わってしまったかを、思い知らされるようだった。 「太乙……愛している」 とまどう彼の名を呼び、玉鼎が口付けた。 彼の、やはり感じて上気している表情を見ながら、太乙はそれでもいいかと思った。 玉鼎と、一緒なら。 「玉鼎は……こういう事が……好き？」 事が終わって、未だソファにmしどけなく座りながら、太乙が聞く。さすがに、その手を戒めていたものは、玉鼎が外し、乱れていた服も、整えてくれた。 「……好きと言うよりも、お前がどうしたら気持ちよくなれるかを、考えた結果……だったのだが……」 「…気持ちよく…って、私は…そんな。だって、あのままでも良かったのに……」 あれほど、快楽を追求していたときは、玉鼎の思い通りになってもいいと思ったのだが、こうやって正気を取り戻すと、やはり恥ずかしいと思ってしまう太乙だった。 「不満はなかったかもしれないが、あれではマンネリになるだろう？」 「そ……それは。でも、それでも…私は……」 「太乙……」 まだ何かを言おうとする太乙の唇を軽くふさぎ、玉鼎はいつもの優しい笑みを見せる。 「私たちは、これからもずっと一緒にいようと決めたのだから。お互いを好きあっているのに……なぜ、してはいけないんだ？」 「……玉鼎。それ、以前私とエッチするときに……使った文句……」 太乙は、呆れながらそう言った。 「だが、結論は同じだ。どうせするなら、気持ちいい方が良かろう？」 「……うん」 そうして、結局は玉鼎に、言いくるめられてしまった、太乙だった。 「……はー」 でもやはり、太乙はため息をつく。それでもその中に、満足した色を読みとり、玉鼎はほくそ笑んだ。 「次は……アオカンもいいな……」 一人にやけているのを、太乙は知らなかった。 合掌
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