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「……なんか……さ」 短くはなかったが、割とあっさりした口付けを終えると、太乙がぼーっとした表情をしながら、口を開いた。 「……私…変な気分に…なっちゃった」 「……変な…気分？」 本当は、もっと太乙を抱きしめて、もっとその唇を楽しみたいと思っていた雲中子は、彼がそんな事を言い出すので、ちょっと残念な気がした。それでも優しい表情で、太乙が何を言うのかと、聞き返す。 「…そ、その……」 見ている内に、太乙の顔が赤く染まり、すっかり俯いてしまって、その表情も、よく見えなくなってしまった。 雲中子が、そっと手を伸ばしその頬に触れると、太乙が緊張するのが伝わった。雲中子は、その手で彼の表情を探るように、少し長い太乙の前髪をあげてみる。 「……太乙。愛してるよ」 そう囁くように言って、よく見ると、太乙の目が熱っぽく潤んでいた。 「太乙…。変な気分…って、そう言う事？」 嬉しそうな色を見せながら、雲中子が問うと、太乙は更に赤くなりながら、もっとうつむいてしまう。 「太乙……」 有頂天になりながら、雲中子は太乙を、側にあったソファに座らせる。 「愛してる」 何度も囁きながら、抱きしめて口づけた。その度に、太乙の瞳が固く閉ざされ、息が乱れていくのが解った。 「太乙……力…抜いて」 彼の宝貝に手を掛けると、びっくりした彼が目を開けて、雲中子の手を掴んだ。 「何だい？太乙……」 優しく、あやすように彼の名を呼んだが、太乙はその手を離す事はなかった。 「あ、あの……。ここ……居間だし…今は…まだ、日も…高いし」 「何だ。そんな事、気にしてたのかい？」 相変わらずな太乙に、やはり笑みがこぼれる。 「それにね……」 もう一度口付け、雲中子は太乙の瞳を覗き込む。 「君は…こういう事、疎そうだからねえ。ゆっくり教えてあげていたら、すぐに暗くなっちゃうよ」 「え、ええ？ちょ、ちょっとぉーーー」 太乙の戸惑いの声は、雲中子の口付けに、飲み込まれていった。 えんど |