そして、スペースにお寄り下さった皆さま、ありがとうございました。
諸事情で、告知が微妙でした。ので、まあ、色々残ってます。
スカJrは、楽しかったので、夏にまた出したいかも知れません。
ジュニケーは、ここだけで告知しても、ダメなんだよね〜。
ジュニケーコンテンツを、作れと言うことか。
実は、予定とか意気込みを書くともれなく、グダグダになるので、あまり書きません。
今回の陽海本は、続きそうです。
で、日記ページは、三ヶ月毎に更新予定なので、ここもＢＮに入ります。
ジュニケーは、ただ酒飲んでイチャイチャしてるだけの、ＳＳです。
こちらは無料配布となりますので、ジュニケ−だけ欲しい方は、ご申告下さい。
オマケ本は、ばっさり切った宇品です。
こちら、本にならずペーパーになるかも知れませんが、
本をお買いあげの方の、オマケなので、ご了承下さい。
では、明日はよろしくです〜m(__)m
そう言えば、陽海本で一番の紆余曲折は、
山陽さんの強○シーンがなくなったことだ！
……途中まで書いてたんだが。
色々ちょっとずつ書いてます。
スカJr本表紙は、前回の絵をちょっといじった。
入稿したので、何とか一冊。
すごいのは、この表紙の絵が、前回の没裏表紙のリサイクルだとか、
宇品のネタが、ばっさり切られたとか、
思わず倒壊元社長Ｋ西の本読んじゃったとか、
色々紆余曲折があるッス。
お品書きはpixivに載せたので、暇があったら見てね。
すごく不親切な、告知ですがね(^_^;
ペーパーはジュニケーＳＳを予定
でも、日記（ここだ。日記とは言ってないが）は
アホネタを書くかも知れない。
と言うことで、思い付いちゃったので、
はやこまネタを書いた。
ネタは色々思い付いているのだが、いかんせん……
成功してるかは、突っ込まないように…
結局、ラフ描きの方が、気に入ったので、ちょっと手直しして、上げてみる。
後ろにスカを描こうと思ったのだが、失敗したので、
それはまた今度。
「午後、空いているか？」
急に東海道に問われて、篠山は目を瞬かせた。今日引き合わされたばかりの、彼。新幹線に決まったときから、色々資料を渡され、運行の事をたたき込まれた。それは、篠山線としての業務と並行してだったので、最後の時を穏やかに迎えると思っていた自分には、思い掛けない忙しさになった。今日も早めに挨拶を…と言われ、東京に来たのだった。
そのまま“上官室”とやらについていけば、何カ所かに電話をした彼は、いきなりそう聞くのだ。
運行に慣れるために、早めに東海道新幹線について指導してもらえ…とは、上からのお達し。あの速さで、５分から１０分間格での運転。それも信じられなかったが、その内自分にも直通し、あのダイヤをあの速度で走るのだ。走れるのはうれしいが、当然不安もある。
いずれにしても、見習いのような形で今日は東海道新幹線についているのだから、予定もへったくれもなかった。
「はい。大丈夫です」
従順に…言葉少なに、彼に答えた。
そうして連れられてきたのは『銀座』だった。
関西生まれの自分には、ただのお上りさんになってしまうような場所。そして案外に古い店が多いと、思ったのも事実。
「いらっしゃいませ」
彼が連れてきたのは、洋服屋だった。所謂、テーラーとか言う奴だ。
「あ、あの…」
「何だ？」
「俺…こう言うところは、その……」
店構えの割には、高級そうで、篠山は尻込みをする。こんな店で何をしろというのか？
「お前は、黙って言われるままにしてればいい。店主……連れてきたぞ」
「はい。こちらが？」
「そうだ。彼が…山陽新幹線だ。遅くなって済まなかった」
何が“遅かった”のか解らず、篠山は二人を見る。
「今日挨拶に来たのだ。一刻も早く、ここに連れて来たくてな」
あの気難しげな東海道新幹線が、こうやって穏やかに話をするとは、思わなかった。それに、何だか楽しそうだ。
「山陽様。こちらへ…」
「え…あ、はい…」
まだ、呼ばれ慣れない名前に、自分の事だと気が付き、篠山は返事をする。
「この男は、見栄えは良いからな。服が映えるだろうな…」
「そうですね。山陽様は、背が高くていらっしゃるから…」
「あ、あの……俺…」
「なんだ山陽。折角の服に負けぬように、もっとぴしっとしろ…」
もう、山陽は逆らわないことにした。多分ここで、服を作れと言うことなのだ。ここの服は高いだろう。まさか、自分で払えと言われるんじゃないかと、心配そうな顔になる。
その内、東海道は別の店員に呼ばれ、その場を離れた。
「山陽様…」
背中を測っていた店主が、そっと口を開く。
「良かったです。東海道様に、御同僚が出来て…」
「……え？」
「東海道様を、支えてあげてください」
「……あ…っと」
支えるどころの話ではない。自分は、まだ新幹線を走らせてさえいない。もし上手く走らせられなかったら、今度こそお役御免だろう。それにあの彼の足を引っ張らないようにするので、精一杯な気がする。
「こちらの生地の方が、いいと思うのだが……山陽」
やっと解放された山陽は、東海道に呼ばれた。何かと思えば、東海道は並べられた生地の前にいて、どれにしようかと、吟味しているようだった。
「お前はどれが良い？」
「え？だって生地は…決まってるんじゃ」
そう言うと、東海道が目を逸らす。
「…私の時は…私だけだったから、既成の生地を使ったのだ。だが…もう…」
そう言って、東海道は山陽を見つめた。
「お前が居る。そして、後に続く者も…東北も上越も…成田も……だから、生地もその為に作るのだ」
「……すげぇ」
その言葉に、東海道は顔をしかめた。
「貴様は、その言葉遣いを直せよ。で、どれが良い？」
後で考えれば、この時の東海道は、余程機嫌が良かったのだ。それだけで済んだのだから。
「…俺は…これかな」
いくつかある中から、一つを指差す。
「ふむ。それか…」
東海道は考え込む。彼のお気に召した物と、違うらしい。
山陽としては、特にこだわりがなかったので、前言を撤回しようとした。が、
「そうだな。それも案外いいかもしれないな。こちらはイタリア系か？」
「はい。東海道様のお選びいただいたのは、イギリス系で…」
イギリス系の方が、かっちり仕立て上がると聞いて、山陽は東海道にピッタリだと思った。
「まあ…お前には、合っているかも知れないな」
その意味するところが、山陽には解らなかった。まさか東海道が、自分の資料を読み込んでいるとは、思わなかったので。つまり、こんな風に真面目ぶって、髪を染め直したところで、東海道にはばれていたのだが。
ちょっと洒落者に見えるイタリア系の生地。この男が着れば、とても格好良く見えるだろう。
＊
「さて、山陽。もう一件行くぞ…」
「あの、まだ何か？」
店を出た東海道は、そう言って笑った。
「靴をあつらえる」
「……あ……あの、そこまで」
「そこまで…だ。我々は、高速鉄道なのだから」
「……」
最初の時、東海道が感じた目眩を、山陽も体験した。それは、『最初』と『二番目』だけが感じる、重圧。
「背筋を伸ばせ、山陽。我々が、後に続く者の、模範となるのだから…」
その時、東海道が『我々』と言った意味を、後になって山陽は理解する。テーラーの店主が『彼を支えてやって欲しい』と言った言葉も。
ただの後輩ではなく、自分と並び先頭を走る者だと、山陽のことを、評価していたのだと。
＊
「あの時は…びっくりしたよ」
その後にも、東海道から『ＪＮＲ』（日本国有鉄道）の文字を刻印された、金の指輪まで渡された。それは、今は『ＪＲ』の文字に置き換えられている。自分を含め上越までは、国鉄の指輪を持っている。
当時のことを思い出し、山陽はしみじみと言った。
「そうなの？高速鉄道は特別だもの、普通じゃないの？」
おやつをつまみながら秋田が言う。
「そうそう。高速鉄道だもの、当然じゃない？」
相変わらず、ソファでくつろぎながら、上越も口を挟む。最も、別の意味で“特別”な彼の言葉は、説得力がない…と、聞いていた東北は思ったが、口には出さなかった。
「お前は候補生出身だし、秋田は色々聞いてたんだろ？まあ、あの時は、東海道のセンスが、ああだとは思わなかったよ」
「何か、変なチョイスでもしたの？」
上越は、自分の制服を眺めながら、聞く。この制服だって、別段おかしいところはない。東海道が選んだと言うには、まともだ。
「いや、逆。この時のセンスがまともだったから…後で『騙された…』と思ったよ」
今、東海道がいないから、山陽もこんな事を言える。
「…今戻った」
いきなりドアが開いて、東海道が戻ってきた。
当然のように、山陽はワタワタしたが、東海道は一瞥をくれただけだった。もしかして扉の外で聞いていたのかも知れない。
「山陽…九州…新幹線の…事だが…」
目を逸らしたまま、東海道が口を開く。
「え？何？」
九州新幹線が、昔のつばめがなると聞いてからの東海道は、あまりその事に触れたがらなかった。だから、東海道の方から話題にしたことに、山陽は驚いていた。
「そろそろ、制服を発注しなければ…ならないだろう？その、どうするか…お前が聞いてこい」
「へ？あの…いつもの店で…作るんじゃないの？」
これは、確実に外で聞いていたなと、その場にいた高速鉄道達は思った。思ったが、誰もその事を指摘する者はいない。
「奴が、東京まで出てくるのは、難儀だろう。デザインも生地も決まっているのだ。それを送るから、向こうで勝手に作ればいい…」
「……まあ。そうだよね。その方が……って、その位、文書で通達すれば良いんじゃ…」
「だからそれを、お前が上手く…」
泣きそうな顔の東海道を見て、山陽は理解した。もし九州が、わざわざでも銀座まで出てきて、あの店であつらえると言ったら、彼に会いたくないであろう東海道は、心穏やかでいられないだろう。それを、上手く言いくるめろと言う事か。
「解った。そういう風にしろって、言っておくよ」
自分の後も、仲間が増える度、東海道があの店に連れて行くのが、慣例となった。それは、彼にとって、とても嬉しいことらしい。
だが今回は、東海道は手放しで喜べないのだ。彼と九州新幹線との確執は、山陽にはよく解らない。だが、東海道が嫌だというのなら、自分がその防波堤になるしかない。
「……頼む」
珍しく東海道から頭を下げられて、山陽は微笑んだ。
「そう言えば、そろそろ採寸に来て欲しいと、店主が言っていたぞ…」
「え？ああ。もうそんな季節かぁ」
基本、それ程体型が変わらない自分達だが、それでも定期的に、採寸し直して制服を作り直す。そろそろ、また今年の分の制服を、作る季節だった。もう、あの店主はいなかったが、息子がその後を継いでいる。そして、この季節に山陽とあの店を訪れて、昔話をするのが、東海道の習慣だった。
「明日なら…私も時間が空いている。一緒に…」
「ＯＫ，ＯＫ。じゃあ、一緒に銀ブラと、しゃれ込みますか？」
「……銀ブラ…また古いことを。私は珈琲は飲まないぞ…」
眉間に皺を寄せた東海道が、そう返す。
「上越先輩。何故、銀ブラでコーヒーなのですか？」
二人の会話について行けず、長野が質問した。
「あのね。銀ブラってのは、銀座をぶらぶらするって意味もあるけど、銀座でブラジルコーヒーを飲むって意味で、昔の作家が言った言葉なんだって…」
博識な上越の解説に、長野は納得して微笑んだ。
「そうだ上越。長野が北陸になったあかつきには、お前が連れて行ったらどうだ？」
にやりと笑って言う東海道に
「それは君の役目だろう！」
と、上越がヒステリックに叫んだとか。
END
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
小ネタなので、色々辻褄合わないところは、ご勘弁を。
はじめ予定していたオチと、随分違っちゃったなぁ
しかし長野は、ある朝起きたら、いきなりでかくなってるのだろうか？
先日ＴＶを見てて、書こうと思った。
が、それがＭりゅーたのネタなので、負けな気もする(^_^;
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ ＊
「おめでとう」
そう言われて、“はと”はとても誇らしかった。
いや。もう“はと”ではない。秋からは“東海道新幹線”なのだ。
「それで…だな…」
上司が、一枚のメモを、東海道に手渡した。
「テーラー？ですか？」
「高速鉄道は、特別でなければならん。制服も、新しく作ることにした」
そう言われて、渡された地図には銀座の住所。
「話は通してある。午後にでも行ってきたまえ」
この制服ではまずいのだなと、ぼんやり思い、東海道は東京駅を出た。たどり着いたそこはレトロな、いかにも老舗という感じの店構えのテーラーだった。
「いらっしゃいませ。お話は伺っております」
国鉄の高速鉄道だと名乗れば、上品な店主が、丁寧に対応してくれた。
「こちらへ」と奥へ案内されて、東海道は、あちこちを採寸された。こんな所まで測る必要があるのかと言う程。
「では生地を…」
デザインはもう決まっているので、生地を選べと言うことらしい。
「ある程度は、こちらで選んでおきました。この中から、東海道様のお好みのものを…」
「いいのか？」
自分がここで選んでしまったら、それが今後の、高速鉄道の制服になってしまうのではないか？
「その内、生地も、誂えのものをと言うことでしたが、今回はまだ」
そうなのだ。自分が最初の高速鉄道。失敗すれば、後に続く者はいない。だからこそ自分は成功しなければならない。この国の発展のためにも。自分は、希望でなければならない。
「そうだな」
店主が並べて見せた生地は、ほとんどが舶来物。デザイン画の通りの、深い緑。その中から好みの手触りの物を東海道は選び、続いて裏地に金ボタン。飾りの金モールを選んだ。ここまでの厚遇。改めて、高速鉄道は特別なのだと感じる。
「何時出来るのだ？」
シャツも同時に誂えてもらえるときいて、東海道は少し目眩がする。
「いえ、まずは、仮縫いに来ていただきませんと」
「……」
「最低でも、二度仮縫いにおいで下さい。それと、ご希望は御座いますか？」
「希望？だがデザインは、もう…」
「多少の融通はききますし、お客様の体型をカバーするような、お仕立ても出来ますよ」
穏やかな笑みを浮かべる店主に、東海道は少し恥ずかしそうに、口を開く。
「その…私は、痩せているので」
東海道は痩せている。ものすごく。その背の割に少ない体重は、当然その体型にも表れていた。だから支給の制服は一番細身の物を選んでも、何時も借りてきたような、合ってないものとなった。今回はきちんと体に合わせて作るのだから、そういうことはない代わりに、この痩せた身体が露わになってしまうと危惧していたのだ。
「解りました。東海道様の、スマートな体型を、きれいに見せるように、お作りいたします」
店主が、自分の意を汲んでくれたことを感じ、東海道は頷いた。その後、いくつかの打ち合わせと、次回の仮縫いの日程を決めて、東海道は上機嫌で店を出た。
＊
「すばらしい。さすが、フルオーダーは違うな」
最近、高速鉄道という自覚が出てきたのか、以前よりも東海道は自信が出てきたように思う。
テーラーでの二度目の仮縫い。補正も済んで、これでいいと、東海道はゴーサインを出した。開通は１０月なので、冬服で式典に出席の予定だ。それ以外に、合い服も今回は用意してくれた。春になったら、夏服も作るという。
「国鉄は、大盤振る舞いだな」
自分一人のために、これ程の贅沢をさせてくれるのだ。勿論、国鉄の、引いては国の威信をかけた高速鉄道に、みすぼらしい格好をさせるわけにはいかないのだろう。
「実は…」
店主が、少し迷った風を見せるので、東海道は小首を傾げて、その先を促した。
「これを頼まれたのは、総裁です」
「え？」
と、東海道は聞き返し、固まった。後に新幹線の父と称される彼は、今はとても大変な時期で、その彼がわざわざ指図をしたのだと知った東海道は、嬉しくもあり、申し訳ない様な気持ちにもなる。
「私の新幹線には、誇り高くいてほしいと」
「そうか……」
託された言葉は重い。
「ならば、何が何でも、成功しなければならないな」
「勿論です」
東海道は、出された紅茶を飲みながら、こうやって話をするのが好きだった。この店主と、穏やかに日々のことを話すのは好きだった。何より彼は、口が固い。
「成功したら、仲間が増える。いや、増やしていかなければ」
茶碗をソーサーに置いた東海道は、店主を真っ直ぐ見つめる。
「約束しよう。十年…いや、五年の内に、必ず、新しい仲間を連れてくる。そうしたら、その者にも…貴方が、制服を作ってやって欲しい」
「楽しみにしております」
彼は、穏やかに微笑んだ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
次で終わります。
東海道兄とは、馬鹿の方向が違うので、つか、Jrは、馬鹿が好きなのか？（違うと思います）
ネタも色々浮かんだので、その内に。取り敢えずスカ線描いてみました。
まだ、戦利品読み終わってないとか、
落とした本の後始末とか。
そんなわけで、続きです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「弟が…」
山陽の視線に気が付いたのか、東海道が顔を赤らめ、言い訳をする
「…持ってきたの？」
「ああ。東の連中に、買わされたらしい…。余っているからと。風呂上がりにでも飲むように言われたから」
「……そう」
多分、買わされたわけではないのだろう。あの、案外にしたたかな鉄道の始祖は、意味もなく何かをしない。東からこれを買うことで、引き替えに何かを手に入れたのだろう。が、今の山陽には、皆目見当がつかない。まあ、Jrが、東海道新幹線にこれを持ってきた真意は、本当に、彼の言う通りなのだろうし。
運行に関する知識と実績は、過ぎるほどに有能な東海道新幹線は、その他の事に、とんと疎い。疎いどころか、無能と言っていいくらいだ。
だから、彼の日々の生活に、彼の周りが、何かと世話を焼く。その事は、皆うれしいと思ってやっているのだ。文句を言いながらも、世話をするJrが良い例だ。
ただ本人は、山形が昔評したように、それに無頓着なのか、良しと思っていないのか。それとも、大切にされる事に慣れていないのか。それに対して、戸惑った表情をする。もしくは、迷惑そうなそれ。
彼が、『動かなくなっては』皆が困る。だから、周りが気を使ってくれていると、東海道は言う。それは正しいのだが、純粋に自分が好かれていると言う事に、思い至らないらしい。
「東海道……」
所在なさげにしている東海道を、山陽は呼んで、手を伸ばす。そうすれば、案外素直に、彼は、山陽の腕の中に収まるのだ。
山陽は東海道を抱きしめた。
ああ、これは、自分の香りだ。案外に、つまらないと思ってしまった物の正体。彼を抱きしめた時に感じる、東海道の香りが好きだった。山形のそれを感じることは、確かに業腹だが、では自分と同じ香りが東海道からしたとして、感じるささやかな優越感と、残念だという気持ちと。
自分がしでかしてしまった事の結末を、山陽は自身で知ることになる。もう二度と、こんな馬鹿げたことなどしないだろう。
「ああ…お前だな…」
なのに、腕の中のコイビトが、自分の背に手を回し、軽く力を入れてつぶやく。
「こういうのも……タマには良いな…」
猫のように、頭を山陽に擦り付けて、うっすらと笑う。
相変わらず、無意識に罪作りな男だ。
「……そうか。お前の部屋に、私のシャンプーを置いておけばいいのか」
「……へ？」
唐突な東海道の言葉に、山陽は変な声を出す。
「よし。今度弟に届けさせるから、バスルームに置いておけ」
山陽は、上がりそうになる悲鳴を何とか押さえた。そんな事になったら、自分は確実にJrに殺される。
「い、イヤ。俺、買っておくから。銘柄解ってるから。それでいい？」
「…お前が買うというなら、構わんが……」
不思議そうな顔で見上げる東海道に、山陽は口付ける。
「……山陽…」
どういう意味で、東海道が言い出したのか、本当の所は解らないままだが、それでも一歩、前進なのかも知れない。
「で……どうするのだ？」
このまま、こんな所で立っていては冷えてしまう。つい、東海道を抱きしめる心地よさにうっとりしていた山陽は、彼の言葉で気が付く。
「勿論……」
にやりと笑うと、東海道の顔が、うっすらと赤くなる。
「お姫様抱っこ…していい？」
「その言い方！何とかならんか！！」
相変わらずの表情で怒る東海道を、山陽は抱き上げた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
長々とありがとうございました。
取り敢えず、一旦終わりです。
この続きは、気が向いたら(^_^;
表紙サンプルあげました。予価￥２００。ほのぼのです。
現在コピー本制作中。どうなるかな〜
ペーパーも作りたいです。
問題は、ペーパーが陽海じゃなさそうなところだ。
全ては２日に！
ＧＷ前に、終わりませんでした〜(>_<)
すいません
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「山陽…」
焦れて、もう一度名を呼べば、髪の中に手を入れられた。
「…東海道」
声が、ひどく近くから聞こえた。けれども、東海道は目を瞑ったままだ。
唇にそっと触れる彼を感じた。熱はすぐ離れてしまい、東海道は、掛ける言葉を思い付かなかった。
目を開けるか、迷う自分に、もう一度優しい声が降ってくる。
「東海道…」
それ以上、山陽は何を言って良いかわからない。
「山陽…」
東海道が、ゆっくり瞳を開ける。
「私は、貴様の…ものだからな」
ありえない言葉を吐き、東海道はうっすらと笑った。
東海道は、山陽のものだと。返せば、山陽は、東海道のものだと言うことだ。
互いに互いを縛る言葉。何よりも、二人は『繋がって』いるのだ。九州とは違う。最初から、東海道と繋がることを宿命付けられ、その為に生まれた。二人、『東海道・山陽新幹線』と、並び称されることが普通。互いが直通しなければ、今の発展はありえない。何よりも、二人で走ってきたあの年月は、誰にも越えられないのだ。
「早く流せ」
「……うん」
シャワーの音が、バスルームに響いた。
＊
「待ってたぞ…山陽」
バスローブを着て、頭をタオルで拭きながら、東海道はソファで待っていた。その後から出てきた山陽は、腰にバスタオルを巻いて、肩にタオル。その山陽に、笑いかけた東海道の視線の先には、ドライヤー。
「仰せのままに…」
どうせするつもりだったんだろう？と、東海道の瞳が言っていて、山陽は笑顔を見せた。
「その前に、貴様は服を着ろ」
「何で？」
「風邪を引かれては、困る」
「そうだね。まあ、また脱ぐんだけどね」
「…山陽」
ジロリと睨んだ東海道に、山陽はドライヤーとブラシも持って近づいた。
ふわりと東海道から香る、自分と同じ香り。自分の香りを纏った東海道は、ささやかな優越感を感じさせてくれる。けれども、案外つまらないものかも知れないと、山陽は気が付いてしまった。
「はい。終わり…」
何時も通りに癖毛を整えてやれば、自然に一筋の毛が跳ね上がり、山陽は微笑ましく思う。山陽の髪も、あらかた乾いていて、東海道に続いて軽く乾かす。見れば、その間に東海道は服を着ていて、片手には、ミネラルウオーターのボトル。
「飲むか？」
渡されたのは『From AQUA』で、自社が大事な東海道にしては、珍しい選択だと、山陽は、彼の顔を見る。
どう見ても、トイカです。兄です。アホ毛が立ってます。
で、そこが東海の子会社だと、今更知った。
どこまでヒヨコ好きなんですか＞東海（と言うか、名古屋？）
だったら、グッズだそうよ…
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「山陽…」
「なぁに？」
鼻歌でも歌いそうな上機嫌で、山陽は東海道の髪を整える。
「貴様…何を使った？」
「……何の話？よし、これで、少し置いて…」
「…山陽」
目を開ければ、目の前の男の顔は……笑っていなかった。
「山陽」
その手が、東海道の後ろに撫でつけた髪に触れる。
「山陽！」
起き上がろうとする東海道を、山陽の大きい手が押し止めた。
「じゃあ、リンス流すから…目ぇつぶって…」
「……おい、説明をっ」
それでも、東海道は何とか頭を上げた。
先程、山陽が別に持っていた袋に、入っていたのは、あのメタボカモノハシの弁当と、食後の道明寺と…山陽が何時も使う、ボディーソープ。シャンプーにリンス。全て、計画的だったのか。自分が、何時も使うバスグッズをわざわざ持ち込んで、自分と同じ香りを付けて。そして……。そこまで考えた東海道に、山陽の声が落ちる。
「今日は…好きにしていいんだろう？好きにするって……こういう事だ…」
「……」
数秒山陽の顔を見つめる。初めは、眉間に皺を寄せて、文句を続けようとしていた東海道の顔は、今度は困惑した表情になり、何かに気が付いたように、目を逸らした。
「東海道？」
東海道は、力を抜き、頭を湯船の端に戻した。
「…早く流せ。のぼせる…」
目を閉じ、静かな口調で言えば、もう一度山陽の指先が、東海道の髪の毛を触った。
「……東海…道」
声が掠れた。もっと、色々言われるかと思っていた。そうしたら、宥める言い訳など、いくらでも思い付くのに。どうして良いかわからず、山陽は東海道の髪を触り続ける。
「そんな声を出すくらいなら、初めからやるな…」
「…お前……」
「別に…イヤではない」
東海道の言葉に、山陽の手が止まり、情けない表情になっていった。
いつもは鈍感で、俺様で。山陽の苦労とか気持ちなど、知らない様に振る舞うのに。時として、何でも解っているような振りをする。多分、それは買いかぶりで、ただ語らないことで相手に与える“何か”を、本能的に知っているだけなのだろうが。
それでも、東海道を好きだという自分の気持ちが、一方通行だけではないことに、山陽は安堵する。
＊
目を瞑ったまま、東海道は山陽の言葉を待った。待ちながら、山陽の見せた感情に、くらりとする。
これは嫉妬だ。
山陽には悪いが、そう思うと素直にうれしい。何故山陽がこんな事をしようとしたか、考えると単純に喜んではいけないのだが。
今期は雪が多かった。何時間にもわたる、致命的な遅れはなかったものの、それなりに遅延はあった。業務終了に、雪ですっかり冷え切った身体を、宿舎に運ぶ日々だった。
けれども、今期は全国的に雪が多くて。山形も東京まで来られない日が続いた。
東海道が凍えて帰ってきて、無意識に山形の部屋に転がり込んでも、そこには誰も居なかった。けれども、解っていてもつい帰ってしまう。そこで、なんとか風呂に入り一晩寝る。
そんな東海道に朝会えば、いつもと違う香りをさせているのだ。山陽としては、複雑な気分だ。
だったら、山陽だって鍵を開けておけばいいと、上越辺りは言うであろう。だが、それは違うと思う。
東海道には、自分の部屋の鍵は渡してあるのだ。それは、何時入ってもいいという意味だ。そして出来るなら、東海道の意志で、自分で鍵を開けて来て欲しい。
そうやって、すれ違った想いは、こんな形として現れた。東海道としては、誰にも、山陽にも迷惑を掛けたくないだけだったのだが。
色々吃驚した……すごいなぁ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「よしっ」
山陽の背を洗い終わった東海道は、そのまま自分の身体を洗って流した。成る程、そう言う魂胆もあって、洗うと言い出したのか。見ていれば、スポンジを山陽に渡し、東海道は湯船に入った。
山陽も、さっさと自分を洗い、泡を流す。
「東海道、髪も洗ってあげるよ」
「私は、お湯に浸かったばかりなのだが…」
困惑する東海道に、山陽は笑いかける。
「背中を向けて、仰向けになって、首をここにつけて…」
山陽は、湯船の縁に畳んだタオルを置いた。美容院で頭を洗うようにしてやるというのだ。
「どうしても、洗いたいのか？」
少し胡散臭そうな顔で、東海道は山陽を見る。
「好きにしていいって、言ったじゃん」
「……何かが、違う気がする」
先程からの疑問を、東海道は口にする。“好きにしていい”と言ったことが、こう返ってくるとは、想像が出来なかった。
「…うん。だから、普段東海道が、させてくれない事…させて」
湯船の端にいた東海道の頬に、山陽がそっと触れる。そのまま、湿って少し伸びた髪に、手を入れた。
「……山陽」
「東海道の髪…気持ちいいよ」
「……さんよ…う」
「早くしないと、のぼせちゃうよ？」
「か、髪を洗うだけだからなっ」
東海道が、山陽に背を向け、言われた通りにする。見上げる形になった東海道の目に、山陽の顔が映った。
「……」
「じゃあ、目瞑って…」
「……うむ」
言われるがままにすれば、さわさわと、山陽の手が軽く髪を触り、温めのお湯が掛けられた。
「お熱くございませんかぁ？」
悪戯っぽく笑って言う山陽に『大丈夫だ』と、こちらは偉そうに答える。
冷たい感触がして、シャンプーが付けられたのが、わかった。
（…成る程、気持ちのいいものだ）
山陽は器用だ。こういう事も、難なくこなせる。山形の器用さとは、また違うけれど。
まだ、山形がいない時。雪や雨で、動けなくなった自分を、山陽は仕方なさそうに、運んでいた。最初の頃は、あんなみっともない姿を見せる事と、彼から感じる絶望感を、悔しく思った。それでも、仕方なく自分の面倒を見る山陽は、乱暴そうなくせに、変に器用だから……身体を温めて、服を着せてくれる手は、むしろ心地よかった。 最近は、そうやって迷惑を掛けることもあまりなくなった。だから、少し、寂しい気もするが。
もう一度お湯を掛けられ、軽くタオルで拭かれる。
「…ありがとう。さっぱりした」
起き上がろうとする東海道を、山陽が止める。
「ダメ。まだリンス付けてない…」
「……リンス？そんなものは付けないぞ」
自分は、Jrが買ってくれたシャンプーだけで済ましていた。彼がこれ一本で良いと言うから。そういう事に頓着しない彼のために、弟はリンスインシャンプーを買って渡していた。
「…つけとけって。後が違うから…」
「……わかった」
もう今日は、抗議をしても無理そうだ。別に実害もないから、奴の好きにさせておこうと思ったのに。
（……この…香りは…？）
いつもは付けない物に、感覚が敏感になったのか。先程から感じていた違和感の正体を、見つけた気がした。
で、前回のといかのポスターを見て、書きたくなったネタ
兄弟で、ポスター撮影？
「カードはトイカ！私鉄にも乗れるぞ」
「兄さん、それは自ら、地元では乗ってもらえないＪＲと…宣伝してるんじゃ」
「うるさい！十社相互利用だから、宣伝しろと言われたのだ。私は本当は○Ｘカードの方を、宣伝したい！」
「…これじゃ、兄さんに乗れないからねぇ」
「そうだぞ。Ｅ○カードなら、私に乗れるぞ！トイカと合わせれば、在来への乗り換えもスムーズだ！お前に乗り換えも……」
「……色々面倒なこと書いてあるね…」
「……詳しくは、駅員に聞け！」
何か、あちこち直してる…急いでupすると、駄目ですね〜
で、実は前に描いていた、小ネタのアップ。
補足(^｡^)
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近所のスーパーに、つばめ型のパッケージが。
クッキーだ。
だが、何故に『west』？
つばめ型で、kyusyuって書いてあって、くまモンも書いてあるなら、
westって書く意味はどこに？
と、速攻で、こんな山陽さんが浮かびました。