僕の欲しい物＊「何だい、北陸。聞きたい事って…？」 ２０１４年。長野新幹線は、北陸新幹線になった。今、目の前にしている上越新幹線とは、色々問題があったものの、取り敢えず無事に運行している。何より、あの可愛いい、子供らしい容貌だった長野は、今は美丈夫と言って良いほどの『大人』になっていた。 「上越先輩だからこそ、お知恵を拝借したいんです」 あの可愛く、礼儀正しい長野の性格を、そのまま大人にしたような、しゃべり方。キラキラと、人を真っ直ぐに見つめていた目の輝きもそのままだと、上越は思っていた。この時まで。 「僕の、答えられることならね」 「多分…大丈夫です」 下を向いて、クスリと笑う。それを見た上越は、おやっと思った。 「東海道先輩と、したいんです。どうすればいいか、教えていただけます？」 「……え？何を……したいって？……東海道…と？」 鷹揚に構えていた上越は、北陸の言葉に身を起こす。そして、きちんと彼に向き直った。 「え…と…それって……そういう…」 「…事ですよ」 穏やかな笑みを見せる後輩を、上越はしみじみと見る。次には、彼も笑顔になった。 「何で…僕なんだい？」 「今までも、上越先輩には、色々教えていただきましたからね」 「…色々…ね」 上越は、目の前の後輩から、視線を外す。成る程。あれ程可愛く素直だった後輩は、こうなったのか。まあ、対象が自分ではないだけ、マシか。 「だとしたら、解ってるんじゃないの？僕なんかに相談したら、どうなるか…」 「僕は…先輩を、尊敬してますよ」 「ふーん。そして、やはり尊敬している東海道先輩と、したいわけだ」 「ええ……だって…」 意味ありげに、北陸は笑う。 「東海道先輩…可愛いんですもん」 「そ…そうだね。見ようによっては、可愛いのかな」 引きつりながら、上越は言った。あの男は、自分からしてみれば、偉そうで新車ばかりで、そのくせ、弱くてウザイ。長野だった彼だって、近くで見ているだろうに。それとも、あの純真な瞳には、そう言う都合の悪いところは、映らなかったのか。 「それに……」 引きつった上越の表情は気にせず、北陸は更に話を続ける。 「東海道先輩…ひどいんですよ。僕の事…わかんなかったんです」 「……え？」 「僕…こんなに大きくなって、折角東海道先輩に、誉めてもらおうと思ったのに…」 その時を思い出して、北陸は不思議な表情をする。 「解ってくれなかったんです。僕だって…」 「それは…ショックだったねぇ」 東海道などは、“育つ”と言うことが、解らないのかも、知れない。 自分も、“小さい頃”があったから、何となく解る。その辺りが、違うのか。 「だから僕は、きちんと僕の事を、認識して欲しいんです。僕はもう、こんなに大きくなって…」 「……」 「東海道先輩の事を、支えられる位になりました…ってね」 「東海道を、支える…ねぇ」 それが何故、東海道とやりたいという話になるのか、上越には理解し難い。 まあ、北陸のこんな感情を、東海道が知ろう物なら、憤死しかねないが。生憎上越には、それを回避する理由がなかった。むしろ、後押しをしてやりたくさえある。 「で。どうなんです？」 「君だって…知ってると思うけど、東海道の…」 あのメンタルの弱さを知っていて、やろうというのか。可愛い後輩だと思っていた長野（今は、育って北陸だが）に、手込めにされたりしたら、あの男がどうなるか……面白そうではあるが、それがなった時に、自分にくるとばっちりを想像すると、多少頭が痛い。 どうしたものかと、上越はその先を言いあぐねた。 「そうだ。僕じゃなく、山形に聞きな」 「……え？」 「そりゃあ、いくらでも、知恵は貸してあげられるけどね。勿論、東海道を傷付けてまで手に入れるのは、本意じゃないだろ？だったら、山形の方が適任だと思うよ」 「……そうですか」 気落ちした風もなく、北陸はそう返した。 「まあ、僕の……一回限りの…気まぐれの…親切なアドバイス…かな」 そう言うと、上越は業務があるからと言って、立ちあがる。 「…ありがとうございます」 ドアを出て行く上越に、北陸は頭を下げた。 パタリ…とドアが閉まる。 「流石…上越先輩」 くすくすと、笑いながら、北陸は感心する。なんて、的確な回答。彼らしい。 「……僕だって、東海道先輩と山形先輩の関係くらい…知ってますよ」 多分その声は、上越には届かない。 「さて……どうしよう」 ひっそりと、北陸はつぶやいた。 |
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本当、すいません。
で、これは北陸×東海道なのか。
実は、そう装って、北陸×上越なのか、
疑問の分かれるところである(^_^;