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愛されると言う事
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『夜、私の部屋に来い』 そう、昼頃に東海道からメールをされて、山陽は舞い上がった。これは所謂“夜のお誘い”と言う奴ではないのか。その一文を見て、嬉しそうにほわん…と笑った山陽は、東海道が決してそう言うことで、お誘いのメールなど寄越さない奴だと言うことを、失念していた。 最終ののぞみで帰ってきた山陽は、急いで宿舎に戻る。今日は、東海の持ちビルの方ではなく、高速鉄道合同の、宿舎に居る…とも書いてあったから。報告書もそこそこに、最速で戻れば、まだ日付は変わったばかりだった。 東海道は、二時間ばかり早く上がったという。そう言えば、出会う在来に『おめでとうございます』と挨拶されたので、何かと思えば、今日は東海道の所に、新車両が走る日だった。 宿舎に戻り、部屋で服に着替え、東海道の部屋のドアをノックする。 「東海道〜」 「おお、山陽か。入れ」 変に明るい声がした。ドアを開けると、TVの音がする。 東海道は、普段ＴＶはあまり見ない。一体何を見ているのだろう…と、山陽は首を傾げた。（まさか…照れ隠し？）な、訳はない。そして、自分の期待が打ち砕かれたことを、山陽は知る。 「丁度良かった。今から始まるぞ…」 何が始まるのかは、聞くまでもなかった。 そこには、ＴＶに映る、N700Aの姿。つまりは、コレを一緒に見て、東海道の自慢話を聞く会…な訳だ。 「……ああ、これ……おめでとう」 がっくりは来たが、まずは相方のめでたい日だ。祝ってやるのが。筋だろう。 「朝から忙しかったんだろう？」 それでも、ソファの場所を東海道が空けるので、ありがたく隣に座った。 「まあな。だが、つつがなく運行できて良かった」 にこやかに言う東海道は、本当に嬉しそうだ。 「で、何が始まるって？」 そこには、ＴＶニュースで流される今日の様子。と言っても、これは山陽も、西で見た画像だった。 「ここで、特集をやるのだ。他より長い時間流れるんだぞ」 「あ〜、そう言えばここの放送局の会長って、お前の所の元副会…」 「それは関係ない。新幹線が素晴らしいから、特集されるのだ」 「…あ、そう。そうだね」 そんな細かいことで、言い争っても仕方がないので、山陽は頷いた。ＴＶでは、今日いっぱい流れていた、N700Aの出発式の様子。 そして、その後は番組独自の映像が流れた。 『新幹線の歴史は、この０系から…』 いつも良く見る、初代新幹線の出発式の映像。そして、順当に１００系３００系と、その歴史が紹介されていった。 「…あっ」 何時も通り、スルーされると思っていた５００系が映る。 『この５００系で、３００ｋｍ／ｈの壁を越え…』 ナレーションも素晴らしい。山陽は、キラキラと眼を輝かせた。どこかの記事で、無視されようと、リニア館から追いやられようと、この５００系が３００Ｋｍ／ｈを達成したのは、揺るぎない事実だ。 そろりと、隣の東海道を見る。が、当の東海道は、その事には興味がないのか 「何だ、東の車両も映るのか…」 と、今度最高時速で走る予定とのはやぶさの画像に、ちょっと渋い顔をして見せた。山陽としては、案外いいものを見せてもらったと思う。勿論５００系は毎日見ているが、こうやってＴＶで紹介されるのは、また格別だ。 そして嬉しそうな山陽に、更にうれしい事が起こった。 『ではここで、ゲストを…』 その言葉と共に、画面はスタジオに切り替わった。そこには、とても大きなN700Aの模型と、その後ろに、歴代の東海道新幹線の模型車両が並んでいた。勿論５００系も一緒にだ。 「うわー、東海道…あれ…」 「おお、素晴らしい模型だな」 勿論、東海道は一番前にある、大きなN700Aの事を言っている。なので、山陽はそれ以上は突っ込まなかった。ある意味、賢明な対応だ。 その後の説明は、まあ予想できる範囲だったが、何故か東海道が、画面を見ながらぶつぶつ言っている。注意して聞くと、その番組で募集しているツイッターに対してのようだった。 画面下に、視聴者からのつぶやきが表示されるのが、この番組の売りなのだが、『もっと安くしろ』だの『リニアは？』だの。まあ、勝手な物だった。だが、それに一々、ＴＶの前のおばさんよろしく、東海道は答えていた。 「あー、まだるっこしい！」 いきなり叫ぶと、東海道はスマホを取り出す。 「お、おい。東海道？」 「＠の後に、アレを付ければいいんだな。よし！」 「東海道！ダメっっっ！送っちゃダメ〜〜」 山陽が、びっくりして、必死で止める。 「何故だ？山陽。私が直々に、疑問に答えてやろうというのだぞ…」 「だからー。中の人は、軽々しく答えちゃダメ！第一、お前のＩＤで、送るんだろ？」 「当然だ」 「そんなコトしたら、話題になっちゃうよ〜『中の人、降臨！』とか、つぶやかれちゃうよ！」 「まずいのか？」 「まずいです。すごくまずいです！お前の発言は、公式なんだからね！」 「公式だから、良いではないか」 「そう言う問題じゃ、なくてですね〜」 山陽は、このやる気の東海道を、どう止めようか困り果てた。スマホを持った東海道の手を、必死で押さえる。こうなると、早くこの特集が終わって欲しい。 このキャスターも多分スタッフも、鉄道マニアだ。つぶやいたところで、採用されるかは解らないのだが、東海道のツイートを、彼らは多分めざとく見つけるだろう。マニアを舐めてはいけない。 『あ、すごいですね。こちらが答える前に、視聴者の方から、解答が…』 その、アナウンサーの言葉に振り向くと、画面には、疑問のつぶやきに答えるツイートが、表示されていた。 「ほ、ほら〜。日本にはいっぱい鉄道ファンがいるんだから、俺達が答えなくても、大丈夫…」 「…そう言う物なのか？」 何とか納得したらしい東海道は、スマホから手を離す。山陽は、一息吐いた。 「そう、東海道新幹線は、愛されてるからね〜」 機嫌の良くなった東海道に、更にたたみかけてみた。 「違うぞ、山陽。東海道・山陽新幹線が…だ」 「え？」 「勿論他の新幹線も。在来も。この国では、鉄道が愛されてるんだから…」 「……うん。そうだね」 そう言うところに拘るのは、東海道の良いところだと思う。口では色々言いながら、全ての鉄道が、平和であればいいと思っている。まあ、その割りに、自分への扱いは大概だが。 以前。二人で見た世界的に有名な長距離列車の引退画像。日本なら、そりゃあもうと言うくらい、（それこそ、東海道が迷惑だっと言うくらい）ファンの人集りなのだが。その終着駅には、誰も居なかった。 『流石早朝なので、誰も居ません』と、ナレーションされていたが、思わず二人で『時間など関係ない』と、突っ込んでしまった。 人がいればいいと言う物でもないのだが、やはりみんなに見送られるというのも、愛された証のようで、うれしいものだ…と、こっそり東海道が言って、山陽も頷いた。 言っている間に、画面は次の話題になった。東海道がHDDレコーダーの録画を確認する。 「あ、それ…俺も…ほしいかな…」 「何だ、お前もまんざらではないのだな。まあ、３月からは、お前の所も走るからな…」 何かを勘違いした東海道は、それでも上機嫌だった。 「あの…さ……」 コピー用のディスクを取りに行こうとする東海道を、山陽は引き留める。もう一度ソファに座らせた。 「……何だ？」 きょとんと、無防備な表情の東海道は、可愛らしい。すっかり機嫌が良いからか、自室だからか。東海道に仕事モードの雰囲気はない。 「俺も、お前のこと…愛してるからね…」 「……」 怒るかと思ったのに、東海道は固まったままだった。 「き、き、貴様…その…」 「うん」 山陽は笑ったまま、東海道を見つめた。 「わ……私は…」 赤くなった東海道を、山陽は嬉しそうに待っていた。この後、何を言ってくれるのだろうか。いつもなら、殴られて終わるのだが、どうも今日は風向きが違う。 「……私も…」 下を向いて、小さな声で言う東海道に、山陽は『今日の運気は、すごくいいんだ〜』と、科学的根拠のない感動を覚えた。 「東海道…」 名前を呼んで、キス一つ。 文句を言われなかったので、山陽はそのまま東海道を抱きしめる。 「山陽…」 「何？」 「わ、私は、そんなつもりで、貴様を呼んだ訳じゃ…ないからな…」 「解ってるよ。新車おめでとう…」 「う、うむ」 今日はこのまま、最初の目的を達せるかな…と、山陽は喜んだ。最近は、自分も随分、東海道の扱いに慣れたと思う。ただ、業務中は、この限りではないのだが。 「じゃあ、一緒にシャワー浴びようか？」 「……え？」 『何で、まだだって、解るのだ？』と言うような顔をして、東海道が山陽を見る。 そりゃあ解るだろう。上は、制服のシャツに、カーディガンを引っかけただけ。パンツは流石に履き替えていたが、それだけだ。多分部屋に戻ってすぐ、録画してあるニュース番組をチェックし、リアルタイムでのニュースも見ていたのだろう。 「そ、そ……それは…」 東海道の顔が、一旦は落ちついていたのに、また赤くなる。それを見て、山陽が“やばいっ”と思った瞬間…。 山陽は、ソファに沈められていた。 「と、東海道〜」 「私が先に入る！貴様は待っていろっ」 そう言い置いて、東海道はバスルームに向かった。 「あ……そう…」 ちょっとだけ痛い顔面をさすりながらも、山陽は嬉しかった。今日はついているらしい。兎も角、このまま部屋を追い出されることはなさそうだ。これも、新車効果なのか。 「次は、一緒に風呂…かな〜」 クリアする目標が出来たと、前向きな男は、一人笑った。 |
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某Ｎ○Ｋの、アレです。ニュース番組。いや〜マジで５００系が…(^｡^)
あれ、変な話にするはずだったのですが、いちゃいちゃで終わっちゃったよ。