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「太公望。これで私を、縛ってくれないかい」 にーこっりと、太乙が太公望の目の前に、リボンを持って現れた。 「たっ太乙！いくらなんでも、わしはそう言う趣味はないぞ！」 太公望が、慌てて押し止めようとした。その様子に、太乙が笑う。 「やだなぁ。私は君と違って、いつでもそのことばかり、考えてるわけじゃないよ。そうじゃなくて……崑崙山２のコントロールのことだよ」 前半部分には、異論があったが、太公望は、太乙が言わんとしていることが、解った。 ここは、太乙が新しく作った、崑崙山２の一室だった。まあ、二人が何をしていたかを聞くのは、ヤボというものだ。先程、太公望はみんなに、闘いに行くものは、夜明けまでに崑崙山２に乗込むように言い渡してあった。 それを、待つ間、久々に二人っきりでいたのだ。 そして太乙は、太公望と一緒に、崑崙山２のコントロールルームへ向かう。 そこは、この球状をした崑崙山２の、上階部分だ。 前方、外に向かい、大きな……そのまま外に出られるような窓が開いており、フロアーの真中には、上下に穴が開いていた。 そこに二本、大きな岩が立っていた。上からは、怪しげなコードが垂れている。 「これが……」 この崑崙山２を動かすためのコントロール室兼…… 「機関室？」 太乙の言葉に、太公望は疑問を抱く。なぜならそこには“操縦室”はあっても、それ以外の機能は、ないようにしか見えない。 「だから……」 太乙は、先程の紐を、太公望に手渡した。 「あのチューブで、私のエネルギーを、崑崙山２を動かすために取り出すんだよ。操縦は……」 言うと、太乙がコントロールエリアに近寄り、操作をする。すると、空中にいくつものコントロールパネルが現れた。 「それで、これを動かすんだけど……もう、手で動かしてる暇はないから…… 」 その後、太乙は得意そうに、崑崙山２についての最新技術を、自慢し始めたが、太公望にとっては、チンプンカンプンだった。ただ、太乙が、自分の為に、どれほど頑張ってくれたかは、よくわかった。だから……。 「それで……わぁ！」 太乙は、いきなり太公望が抱き着いてきたので、びっくりしてしまった。そのついでに、床に倒れこむ。 「太公望。だから……」 文句を言おうとした太乙は、太公望が自分の頭を“いいこいいこ”という感じでなでているのを見て、黙ってしまった。 「太公望……。あの……」 「よく……がんばったのう。だから、お主がそれ以上身を犠牲にするかと思うと……」 「やだなぁ。私は好きでやっているんだから。それに、君のためなら……」 その先は、さすがに恥ずかしいらしく、口の中でモゴモゴ言うだけだったが。 「だから、これは、君の手でして欲しかったんだ」 うつむいた太乙に、太公望はやさしく口付けた。 「こんな風で、良いのか？」 コントロールエリアの岩に登った太乙は、そこから落ちないように、太公望にリボンを巻いてもらっていた。そして、まだ手が比較的自由になるうちに、自分の頭部に、怪しげなチューブを取り付ける。 「太乙……」 呼ばれて、太公望の方を向くと、いきなり、キスをされた。 「たっ……！」 「何じゃ？」 「うー」 何と問われれば、文句を言うことではないし、太公望の悪びれない態度に、太乙は、困ってしまった。 「痛くはないかのう？」 「う、うん。大丈夫だけど……」 いきなり話題をそらされて、太乙は困惑した。が、その返事を言い終わらぬうちに、また、太公望に、口付けられる。 「あ……！」 「少しはこれで……気がまぎれるであろう？」 こんなことで紛れるとは、到底思わないが、太公望の気遣いは、うれしかった。 「本当は、君がしたいんじゃないの？」 少しいじわるっぽく、太乙が言う。 「して……良いのか？」 「ダメ」 「うー」 「早くしないと、夜が明けちゃうよ」 「なーに、こんなもの……わしの手にかかれば！！」 そう言うと、太公望は、思ってもいなかった器用さで、太乙を戒め終わった。もちろん、その間にも、太乙に口付けすることは、忘れない。 「これで……最後じゃ」 そう言って、もうすでに息のあがっている太乙に、濃厚なキスをする。はじめは少し、いやがっていた太乙も、その唇も……舌も、自ら望むように、なっていた。 「はぁ……。ん、ありがとう」 「うむ」 太公望は、太乙の桜色に染まった頬に、そっと手を添えた。 まだ空には、満天の星が輝いていた。
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